らうんどあばうと

ラウンドでアバウトでランデブー

【詩】夜の電車はがたんごとん、人生ぷかぷかいい気持ち

この快速電車に乗っている人はみな、どこか疲れているように見える。若い女も中年の会社員もおなじようにしどけなく俯いて座っている。僕にわかるのは疲れているという部分だけで、それぞれがなぜ疲れているかはわかりようがないところである。そして僕は、涙が出そうになるのをずっと堪えたままで座っている。僕が大声をあげて泣きたいこと、僕がなぜ泣きそうなのかということ、それをここにいる誰がわかろうか。みな自分の疲れで手一杯である。僕がなぜ悲しくいるかを、例えばここに書いてもどうしよう。書いても意味がないことである。僕の悲しみと後悔と憎悪は僕のものである。若い女の疲れは若い女のもので、中年の疲れは中年のものである。それぞれがそれぞれのものを持っている。もちろん自分だけのものにしなくてもいいのである。それぞれがそれぞれの方法で分けあえばいいだろう。どちらを選ぶにしても、僕としてはそれぞれがそれぞれの中で上手にやってくれることを祈るだけである。しかし。僕のものは僕のみのものである。どうして分けあう理由があるだろうか。僕は僕のみの心で今ここにいる。
そして僕たちは、ひゃく年も経てば多分みないなくなるだろう。ひゃく年でないにしても、にひゃく年も経てばみな滅びるに違いない。僕たちはその事実をいつも曖昧にしてしまって、引き出しの一番奥にしまったままにしている。それをわざわざ引っ張り出してくるのは道理ではないとみなが思っている。そうだろうか。そうではないと僕はこの心で考える。本当はとても不思議なことである。僕たちは引き出しをあけて、いまだ新しいままでいるそれを机の上にもってくるべきである。きっと僕たちこそが考えなければいけないことだろう。僕のみではない。僕たちである。
ここまで考えて僕はひとたび目を閉じる。僕だって十分疲れているのである。そして僕は電車の音に合わせて、こんな歌をうたう。

笑った 日は いい気持ち
怒った あとも いい気持ち
野良猫 見て いい気持ち
誰かを 助け いい気持ち
誰かに 助けられて いい気持ち
憎む気持ち 悔やむ気持ち いい気持ち
ざいあく 感 あるし
どうしようもない 夜 あるし
泣いても かわらないけど…なくし

涙のあわがぷかぷか (ぷっかぷか)
僕の人生ぷかぷか いい気持ち
ずっといい気持ち
涙がかわかなくても いい気持ち いい気持ち いい気持ち