らうんどあばうと

ラウンドでアバウトでランデブー

【2019/1/23】

強烈な才能など必要ないのだ。必要なのは、真摯であることと続ける勇気を持つこと。これは慰めの言葉じゃなくて本当のことだってことは一番よく分かっているでしょう、これまで見てきたことがそうだったのだから。才能がどうのこうの言い続けている人間はただ精神が幼稚であるだけ。確かに興味の対象に対する適性が人と比べて無い場合もある。それは仕方ない、運が悪かった。運が悪いとは詰まり、何を責めることをしなくても良いっていうこと。たとえそれとの相性が悪かったとして、相性が悪かった以上のことは何もない。その対象だって社会に組み込まれているもので、だから定められたやり方っていうものも存在していて、そのやり方と相性が悪かっただけで背後にある惹きつけられたものとの関係が変わるわけでもない。運が悪かっただけ。肝要なのはこれは何の後ろめたさもない言葉だということ。人間は経験の上でしか生きられない、それは知っている。未知のものを考えるときだって経験に当てはめているに過ぎず、類推することしかできない。じゃあどうするか、経験を広げることだ、興味の対象も経験の範囲で見つけたものでしかなく、経験を広げることではじめて分かることはあまりにも多すぎる。使い古された言葉だと思うかもしれない、だけどそれは経験していないから。経験しなくては分からないのだ、経験しなくては分からないということさえも。でも別に経験しようとしなくても良い、しがみついていても良い。そのままだって良い。でもそのままじゃなくても良い。どっちでも良い。どっちでも良い、いや今これは消極的な言葉ではないよ、憧れだって捨てても良いし、燻りもそのままにしておいても良い。でも今はまだこれは分からないな。でも誰だって生き続けていれば分かる、小川だったり大海だったりする時流の中で生き続けることで誰でもそのうちに分かる。誰かと分かち合えはしないけどそのうちに見つけることが出来る、それ。何だって良い、見つけたらずっと持っておくだけで良い。何だって良い、くだらない言葉だと思う、何だって良くないと思う、うん、生きるということそのものと人間社会の中で生きることを分離して考えていないからそう思うんだろうけど、本当は何だって良いしそのままでもそのままじゃなくても良い。文句をつけたくなるだろう、そしてそれはきっと正当な文句なんだろう、でもこれが間違っているかどうかもどっちでも良い。だって正しさなんて何一つここには無い。でも間違いだって何一つ無いんだぜ。

なあ、そんなことをいちいち考えなくてもいいだろう。そう思うんだけどそうはできないんだ。なぜ?こういう人間だから。都合良いんだな。いいや、これは都合が悪いって言うんだよ。

たったひとつでも綻びがあればそれは身体中を駆け巡って埋め尽くす、この身体に血が流れているように。

私は人間は平等であると信じています。そうかい、そんなことあるはずないだろう?いえ、人間は全員平等です、なぜそう思うのですか、あなたはつまり差別主義者ということですか?差別主義者?、さあ、それは分からないね、問い返そう、おまえはなぜ人間は平等であると考えてるんだ?考えているわけではなく、ただそうであるからなのですが……、同じ種として生を受けた私たち人間は当然平等でしょう。ああ、そりゃ人間は全員同じ人間だからな、そこに違いは無いだろうな、だが平等ってなんだ?、どういう意味で言ってるんだ?、ずっと悲しみに囚われたやつだっていればずっと笑っているやつだっている、そいつらが平等ってのはちょっと無理があると思うが。私が言っている平等とは、そのような感情、もしくは外観のことではなく、もっと本質的なことなのです、人間から見た人間、これが重要なのではなく、もっと大きな存在から見た場合のことを言っているのです、つまりは神……。やめてくれやめてくれ、神の話だなんて聞きたくない、だっておまえの言おうとしてる神っていうやつはおまえの考えが作りだしたものだろう、そんなものを持ち出しても何の裏付けにもならないってことぐらい分かるだろう。しかし、神はいます。どこにだ?私たち人間はそれを知ることができません。じゃあ、その神を信じていない俺のような人間もそいつからしたらおまえと同じように平等なのか?はい、そうです、神はそのように私たちを規定しています。そりゃ良かった、ああ、これだから困るんだ、平等論者ってやつは神は存在してるって心から信じていやがる、なあ、神なんて存在するわけないだろう、完全性を持ったものは存在しないからこそ完全なんだからな。あなたが神を信じていないのであれば、それでも良いでしょう、しかし神は厳然と存在しているものなのです。話が終わらないな、いいか、人間が平等であるための条件を教えてやる、神がどうのこうのはどうでもいい、いいか、その条件っていうのは、人間皆が人間は平等であると心から信じていることだ、だが俺はそうは信じていない、だから人間は平等じゃないのさ。